江戸時代の職業ランキングは、主に「番付」と呼ばれる形式で決められていました。
この番付システムは、元々は相撲の力士の順位表を指していましたが、江戸時代後期には様々な職業や物事のランキングにも応用されるようになりました。
この番付をもとに、人気職業を紹介します。
1.職人のランキング
職人のランキングは、『諸職人大番附』という形で表されていました。このランキングでは…
140種の職人が「諸職」と「雛形」の2つのカテゴリーに分けられていました。
諸職の1位は大工!
雛形の1位は刀鍛冶!
でした。
また、特別な職人(例:装束師、冠師、鳶、纏作り)は別格扱いで、行司や欄外に記載されていました。
2.人気の高い職業は?
江戸時代の職業ランキングでは、現代社会では意外な職業が特に高く評価されていたことが分かります。
1.大工、左官、鳶(とび)
これらは「江戸の三職」と呼ばれる花形職業でした。
特に大工は、火事の多い江戸で常に需要があり、現代の年収約800万円に相当する収入を得ていました。
2.はたおり(機織り)
諸職ランキングの5位に入っており、着物製作に関わる重要な職業でした。
3.染物師
雛形ランキングの5位に位置し、着物関連の職人として高い評価を受けていました。
4.ぬいはく(縫箔)師
諸職ランキングの9位に入っており、着物製作において重要な役割を果たしていました。
3.評価されていた職業は?
1.大工(番匠大工)
諸職の1位に位置し、「諸職の司」と呼ばれるほど重要視されていました。
建築技術の集大成として、他の技術者を統括する立場にありました。
2.刀鍛冶
雛形の1位であり、武士の必需品である刀を作る重要な職業でした。
支配階級の象徴に関わる仕事として一目置かれていました。
3.米屋と両替屋
儲かる仕事ランキングでは大関の座を獲得しています。
米屋は江戸時代の商売の売上高の38%を担っており、両替屋は当時の銀行のような役割を果たしていました。
4.装束師、冠師
朝廷の正装である衣冠装束を作る職人として、別格扱いで行司欄に記載されていました。
5.鳶(とび)
「江戸の花」と称えられ、欄外に記載される特別な扱いを受けていました。
6.はたおり(機織り)
諸職の5位にランクインしており、着物関連の職業として高く評価されていました。
7.染物師
雛形の5位に位置し、機織り同様、着物関連の職業として重要視されていました。
これらの職業は、技術の高さや社会的重要性、経済的価値などの観点から特に評価されていたことがわかります。
需要のあった職業は?
ランキングに入らずとも、日常生活に必要なものや収入などの面で需要のある職業はありました。
・米屋、両替屋
経済の中心的役割を果たし、高収入が見込める職業でした。
・唐物屋、材木屋、酒屋、炭屋
日常生活に欠かせない商品を扱う職業として人気がありました。
・石切、木挽
大工ほどではないものの、1日あたり約1万円から1万5000円相当の収入がありました。
江戸時代の職業は、技術や専門性が高く評価され、社会的地位と収入の両面で魅力的なものが多くありました。
特に建築や着物関連の職人が高い人気を誇っていたことがわかります。
4.江戸時代の職業の収入は?
江戸時代の職業による収入には大きな差がありました。以下に、いくつかの職業の収入を現代の価値に換算して紹介します。
高収入の職業
・歌舞伎役者(人気の主役級)
年収約1億円。特に人気のある役者は「千両役者」と呼ばれ、1日で約1億円を稼ぐこともありました。
・大工
年収約300万円から800万円。
ただし、収入は不安定で、雨の日は仕事ができず無収入になることもありました。
中程度の収入の職業
・中流農家
年収約470万円。
ただし、年貢や地代を支払うと、手取りは約150万円程度でした。
・一般の職人
月収約10万円。年収にすると約120万円程度です。
その他の職業と収入の特徴
・駕籠かき
現代のタクシーのような仕事で、一定の需要がありました。
・鍛冶職人、瓦職人
具体的な収入は不明ですが、真面目で集中力があり、器用に仕事をしたと評価されています。
江戸時代の収入は現代と単純に比較することは難しいですが、職業による収入格差は現代よりも大きかったと言えます。また、税金や諸経費の負担も大きく、実際の手取りは収入の半分以下になることもありました。
まとめ
江戸時代という背景がら、日常生活に密接に関係する職業が人気ランキングに入っていました。
1.大工、左官、鳶(とび)
2.はたおり(機織り)
3.染物師
4.ぬいはく(縫箔)師