万博では、ほぼ毎日「ナショナルデー・スペシャルデー」として式典やイベントを行っています。
「ナショナルデー・スペシャルデー」とは、それぞれの公式参加者の参加を称える日で、公式参加者の文化に対する理解を深め、国際親善の増進に寄与することを目的に行います。
当日は、公式参加者が国内外の賓客や一般の来場者を招いて行う式典と文化イベントが行われ、多様な文化や特色に触れ、楽しむことができます。
4月13日に万博が開幕して2日目、14日から早速行われたこのイベント。
5月25日(日)は「タンザニア」です。
タンザニアの国のことを少しでも知って万博に参加すると、また違った発見や楽しさがあるかもしれません。
この日以外も、パビリオンでは様々な取り組みが行われているので必見です。
1.タンザニアの場所は?
タンザニアはアフリカ東部に位置し、ケニア、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジ、ザンビア、マラウイ、モザンビークと国境を接し、東はインド洋に面しています。
首都はドドマですが、最大の都市で経済の中心はダルエスサラームです。

2.タンザニアの国の特徴は?
面積は日本の約2.5倍で、人口は約6,100万人(2021年)です。
アフリカ最高峰のキリマンジャロ山や、アフリカ最大のビクトリア湖、タンガニーカ湖など雄大な自然に恵まれています。
約130の民族が共存する多民族国家で、イスラム教とキリスト教がともに約40%、土着宗教が約20%を占めています。
政治的には安定しており、民族や宗教の違いを超えた共存が特徴的です。
3.タンザニアの言語は?
公用語はスワヒリ語と英語です。
スワヒリ語は主に社会・政治・初等教育で、英語は中等教育や高等教育、行政などで使われています。
さらに、各民族ごとに独自の言語を持ち、国内では100以上の言語が話されています。
スワヒリ語講座
おはよう
Habari za asubuhi(ハバリ ザ アスブヒ)
こんにちは
Jambo(ジャンボ)、またはHabari(ハバリ)も一般的です。
さようなら
Kwaheri(クワヘリ)
ありがとう
Asante(アサンテ)
4.タンザニアの文化的特徴は?
多民族・多宗教社会で、部族ごとに独自の文化や伝統を持っています。
主に、スワヒリ文化(アラブやペルシャ文化とアフリカ土着文化の融合)、マサイ文化(伝統衣装や牧畜生活)、宗教文化(ラマダンやイードなどの宗教行事)などが見られます。
芸術ではティンガティンガと呼ばれるカラフルな絵画や、カンガという布地、木琴のマリンバなどが有名です。
食文化では、ウガリ(とうもろこしやキャッサバの粉を練った主食)、キャッサバ、バナナ、米などがよく食べられます。
挨拶や年長者への敬意を重んじる文化も、タンザニアの特徴です。
5.タンザニアの観光名所は?
セレンゲティ国立公園
セレンゲティ国立公園はタンザニア北部、キリマンジャロの裾野に位置し、面積は約14,763km²にも及ぶ広大なサバンナ地帯です。
「セレンゲティ」とはマサイ語で「果てしなく広がる平原」を意味し、その名の通り見渡す限りの草原が広がっています。
この草原には約300万頭もの哺乳類が生息し、ライオン、チーター、ヒョウ、アフリカゾウ、バッファロー、キリン、シマウマ、ガゼル、インパラ、アンテロープなど多様な動物が見られます。
特にヌーは約150万頭にのぼり、セレンゲティを代表する動物です。
1981年にユネスコの世界自然遺産に登録され、自然保護の観点からも世界的に重要な場所とされています。
セレンゲティ最大の見どころは、「グレート・マイグレーション」と言われる毎年繰り広げられるヌーやシマウマの大移動です。
約150万頭のヌーと数十万頭のシマウマが、草と水を求めて1,500kmにも及ぶ壮大な旅をします。
乾季が始まる5~6月頃にケニア側のマサイマラ国立保護区へ北上し、雨季が始まる12~1月頃に再びセレンゲティに戻ってきます。
特に有名なのが、マラ川での川渡りです。
ライオンやハイエナ、ワニなどの捕食者が待ち構える中、命がけで川を渡るヌーの姿は「生命のサイクル」を象徴する圧巻の光景です。

ンゴロンゴロ自然保護区
ンゴロンゴロ自然保護区は、タンザニア北部に位置し、約250万年前の火山の大噴火と地殻変動によって形成された直径約20km、深さ約610mの巨大なカルデラ「ンゴロンゴロクレーター」を中心としています。
このカルデラは世界最大級で、山手線の内側がすっぽり入るほどの広さです。
クレーター内には草原、森林、湖、沼地など多様な自然環境が広がり、約25,000頭もの野生動物が生息しています。
アフリカの「ビッグファイブ」(ライオン、ゾウ、バッファロー、ヒョウ、クロサイ)をはじめ、ヌー、シマウマ、カバ、ハイエナなど多種多様な動物が見られます。
特に絶滅危惧種のクロサイが自然のまま観察できる貴重な場所になっています。
クレーターは外輪山に囲まれているため、乾季の影響を受けにくく、年間を通じて水と緑に恵まれています。
そのため多くの動物がクレーター内で一生を過ごす、世界でも珍しい生態系が形成されています。
ンゴロンゴロ保全地域は1979年に世界自然遺産、2010年には文化遺産も加わり「複合遺産」として登録されています。
西部にはオルドバイ渓谷があり、初期人類の化石や足跡が発見されており、「人類のゆりかご」とも呼ばれています。
また、マサイ族が伝統的な遊牧生活を送りながら野生動物と共生している点も特徴です。

キリマンジャロ国立公園
キリマンジャロ国立公園はタンザニア北東部に位置し、標高5,895mのキリマンジャロ山を中心とした公園です。
アフリカ大陸最高峰であり、世界最大級の独立峰でもあります。
1987年にユネスコ世界自然遺産に登録されています。
キリマンジャロ山は、キボ峰(5,895m)、マウェンジ峰(5,149m)、シラ峰(3,962m)の三つの火山から構成され、キボ峰が最高峰です。
このキボ峰の山頂には直径約2.2kmのカルデラと氷河があり、赤道直下にもかかわらず万年雪と氷河が残る神秘的な景観が特徴です。
ここでは標高ごとに気候と植生が大きく変化し、低地のサバンナや熱帯雨林から、高地のヒース帯、さらに高山砂漠、そして山頂の氷河地帯まで、まるで「地球の気候帯を垂直に旅する」ような体験ができます。
また、山頂の氷河は地球温暖化の影響で急速に縮小しており、過去100年で約8割が消失したといわれています。
更に、今後15年以内に完全消滅する可能性も指摘されています。

ザンジバル諸島 ストーンタウン
ストーンタウンはザンジバル諸島(主島ウングジャ島)の西海岸に位置し、2000年にユネスコ世界遺産に登録された歴史地区です。
アラブ、ペルシャ、インド、ヨーロッパといった多様な文化が交錯し、独特の雰囲気と建築様式が魅力です。
街並みはサンゴ石で造られた3階建て以上の石造建築が連なり、細い路地が迷路のように入り組んでいます。
建物や扉の装飾、石畳の道など、他の東アフリカ地域では見られない景観が広がっています。
かつてはインド洋交易の要衝として栄え、奴隷や象牙、金などの集積地・輸出港として発展しました。
アラブ商人の定住、ポルトガル・オマーン・イギリスの支配を経て、複雑な歴史と多文化が根付いています。
また、かつての奴隷市場跡地に建てられたアングリカン大聖堂の地下には、奴隷収容室が残り、庭には奴隷記念碑もあります。
ザンジバルの悲しい歴史を今に伝える重要なスポットとなっています。

マニャラ湖国立公園
マニャラ湖国立公園は、タンザニア北部のグレート・リフト・ヴァレーの谷底に位置し、断崖と湖、地下水林、アカシア林、氾濫原、サバンナといった多様な生態系がコンパクトなエリアに凝縮されています。
公園の面積は約325km²、そのうち約230km²がマニャラ湖です。
この公園最大の特徴は「木登りライオン」です。
通常は地上で過ごすライオンが、アカシアの木の枝でくつろぐ姿が見られる世界でも珍しい場所です。
ゾウ、キリン、バッファロー、シマウマ、ヌー、ヒヒやブルーモンキーなどの霊長類が生息し、湖畔や森林、草原で多様な動物に出会えます。
また、400種以上の鳥類が確認されており、特にフラミンゴの大群が湖をピンク色に染める光景は圧巻です。
公園入口付近には巨大なイチジクやマホガニーが生い茂る地下水林が広がり、湧き水によって豊かな森が維持されています。
そして、70度にもなる天然の温泉もあり、地質的な見どころも豊富です。

タンガニーカ湖
タンガニーカ湖はアフリカ大地溝帯(リフトバレー)に位置し、南北約660~673km、東西最大約70~80km、面積約32,900~33,000km²という規模を誇ります。
ビクトリア湖に次いでアフリカで2番目、世界でも7番目の大きさを持つ湖です。
最大水深は1,470m以上で、バイカル湖に次いで世界で2番目に深い湖です。
水は非常に澄んでおり、湖底まで見通せる場所もあります。
湖の東岸はタンザニア、西岸がコンゴ民主共和国、北東端がブルンジ、南端がザンビアと、4カ国にまたがる国際湖です。
タンザニア側の主要な港町はキゴマです。
タンガニーカ湖は生物多様性が非常に高く、約400種の魚類のうち約8割、貝類の約9割が固有種です。特にシクリッド(カラフルな熱帯魚)やタンガニーカイワシなど、他では見られない魚が多く生息しています。
地球上の利用可能な表面淡水の約16%がこの湖に蓄えられており、世界有数の淡水資源でもあります。

ビクトリア湖
ビクトリア湖はタンザニア、ウガンダ、ケニアの3カ国にまたがるアフリカ最大(面積約68,800~69,484km²)の淡水湖で、世界でも2番目または3番目の大きさを誇っています。
湖面の標高は約1,134m、平均水深は40mと浅めですが、その広さは九州の約2倍に相当します。
ビクトリア湖はナイル川の源流としても有名で、北部ウガンダのジンジャからナイル川が流れ出しています。
湖には200種以上、かつては500種以上の魚類が生息し、多くの固有種のシクリッド(カラフルな熱帯魚)が進化した「ダーウィンの箱庭」としても知られています。
しかし、外来魚ナイルパーチや水草ホテイアオイの繁殖により生態系のバランスが崩れ、固有種の絶滅や水質悪化が深刻な問題となっています。
湖岸や島々にはカバ、ワニ、カメ、オッター、サル、シタツンガ(湿地に棲むアンテロープ)など多様な野生動物が生息しています。
また、アフリカウミワシやハシビロコウなど400種以上の鳥類が観察でき、バードウォッチングの聖地でもあります。
湖にはウケレウェ島、ルボンド島、ウカラ島など訪れる価値のある島々が点在し、ボートツアーや釣り体験、カヤック、サンセットクルーズ、村落訪問など多彩なアクティビティが楽しめます。
特にタンザニア側のムワンザやブコバなどの湖畔都市は、文化体験や市場巡りも魅力です。
湖は天候が急変しやすく、毎年多くの漁民が事故で命を落とす「世界一危険な湖」とも呼ばれる側面もあります。ま
た、富栄養化や外来種の拡大による環境悪化が進行しており、国際的な環境保全プロジェクトも実施されています。

オルドバイ峡谷
オルドバイ峡谷(オルドヴァイ渓谷、Olduvai Gorge)は、タンザニア北部ンゴロンゴロ保全地区に位置する全長約40km、幅数百メートル、深さ約100mの巨大な渓谷です。
ここは「人類のゆりかご(Cradle of Mankind)」とも呼ばれ、人類進化の研究において世界的に極めて重要な場所になっています。
1913年にドイツのハンス・レック教授が化石人骨を発見し、1959年にはイギリスのルイス・リーキー博士と妻メアリーによってアウストラロピテクス・ボイセイの頭骨や最古級の石器が発掘されました。
その後もホモ・ハビリスの化石や、礫石器を主体とした「オルドヴァイ文化」と呼ばれる旧石器文化の遺物が数多く見つかっています。
また、火山活動による黒・白・赤の地層が100mの断崖に水平に延び、200万年以上にわたる地球と人類の歴史を目で見て実感できる地形が特徴です。
「オルドバイ」は現地マサイ語で野生のサイザル(麻)の一種「オルドパイ」に由来していますが、外国人の発音の誤りから「オルドバイ」として広まりました。
渓谷に併設された博物館では、発掘された化石や石器、アウストラロピテクスやホモ・ハビリスなどの人類化石のレプリカ、約360万年前のラエトリの足跡化石のレプリカなどが展示されており、人類進化の歩みを学ぶことができます。
専門ガイドの案内では実際の発掘現場や地層を間近に見学でき、考古学や地質学の視点から詳しい解説を受けられます。
赤茶色の切り立った崖と乾いた大地が広がる景観は圧巻で、展望台からは渓谷全体や遠くの山々まで見渡すことができます。
また、近隣のラエトリで発見された、約360万年前の初期人類の足跡化石(火山灰に残されたもの)のレプリカも見学可能です。

まとめ
タンザニアは国立公園や湖など雄大な自然に恵まれた国です。
日本からは訪れにくい場所にありますが、一度は行ってみたい国であることが分かりました。