万博では、ほぼ毎日「ナショナルデー・スペシャルデー」として式典やイベントを行っています。
「ナショナルデー・スペシャルデー」とは、それぞれの公式参加者の参加を称える日で、公式参加者の文化に対する理解を深め、国際親善の増進に寄与することを目的に行います。
当日は、公式参加者が国内外の賓客や一般の来場者を招いて行う式典と文化イベントが行われ、多様な文化や特色に触れ、楽しむことができます。
4月13日に万博が開幕して2日目、14日から早速行われているこのイベント。
6月1日(日)は「パレスチナ」です。
パレスチナの国のことを少しでも知って万博に参加すると、また違った発見や楽しさがあるかもしれません。
この日以外も、パビリオンでは様々な取り組みが行われているので必見です。
1.パレスチナの場所は?
パレスチナは、中東、地中海の東岸に位置し、東をヨルダン、西を地中海、南をエジプトと接しています。
主に「ヨルダン川西岸地区」と「ガザ地区」の2地域から成り立っています。

2.パレスチナの国の特徴は?
パレスチナは、ヨルダン川西岸地区:約5,655平方km(三重県ほど)、ガザ地区:約365平方km(福岡市よりやや広い)の広さがあり、総人口は約548万人です。
1988年に独立を宣言し、現在は国連のオブザーバー国家として認められていますが、完全な独立国家ではなく、ヨルダン川西岸地区はパレスチナ自治政府、ガザ地区はハマス政権が実効支配しています。
名目上は首都は東エルサレムですが、実際の行政中心はラマッラーです。
住民の大半はアラブ人で、イスラム教(約92%)、キリスト教(約7%)などが信仰されています。
社会情勢としては、長年にわたり紛争や占領、難民問題が続き、ガザ地区は厳しい封鎖下にあり、西岸地区も分断や入植地問題を抱えています。
3.パレスチナの言語は?
公用語はアラビア語(パレスチナ方言)です。
ヘブライ語や英語も一部で通用しますが、主にアラビア語が使われます。
アラビア語講座
おはよう
صباح الخير (サバーハル・ヘール)
※「おはよう」に対する返事は「صباح النور(サバーハン・ヌール)」=「光の朝を(おはようの返事)」です。
こんにちは
مرحبا (マルハバ)
※「أهلاً وسهلاً(アフラン・ワ・サフラン)」もよく使われます。
さようなら
مع السلامة (マアッサラーマ)
ありがとう
شكراً (シュクラン)
4.パレスチナの文化的特徴は?
パレスチナは、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の発祥地であり、何千年もの間さまざまな文明や宗教の影響を受けてきました。
歴史的、宗教的遺跡が多く残り、宗教行事や巡礼も文化の一部です。
伝統工芸として、パレスチナ刺繍(母から娘へと伝わる色鮮やかな刺繍で、民族衣装や小物に使われます。花や木、星や月など身近な自然をモチーフにした色鮮やかなデザインが特徴で、地域によって模様や色使いが異なります。)やヘブロンガラス(ローマ時代から続く伝統のガラス工芸)、オリーブの木工品(ベツレヘムの木彫り細工など)があります。
パレスチナ刺繍は、現在難民キャンプでも女性たちの大切な収入源となり、誇りとアイデンティティの象徴となっています。
ダブカと呼ばれる伝統的な集団ダンス(結婚式や祝祭で踊られます)や、ウードなどのアラブの伝統楽器も特徴です。
食文化は豆類、ナス、トマト、肉、魚介、オリーブオイル、ハーブを多用した料理があります。
沿岸部では、魚介類も豊富に使われます。
大皿料理を囲んで大勢で食事をする「おもてなし」の文化が根付いています。
5.パレスチナの観光名所は?
ベツレヘム
ベツレヘムは、パレスチナ自治区を代表する歴史的かつ宗教的な都市であり、世界中から多くの巡礼者や観光客が訪れる聖地です。新約聖書ではイエス・キリストが生まれた地とされ、最も重要なキリスト教の聖地のひとつとして知られています。
町の中心にある「降誕教会」はその象徴で、地下には「生誕の星」と呼ばれる神聖な場所があります。
また、聖家族が避難したと伝わる「ミルクグロット」や、クリスマスミサが行われる「聖カタリナ教会」、羊飼いに天使が現れたとされる「羊飼いの野」など、聖書の物語を感じられる場所が点在しています。
加えて、ユダヤ砂漠の断崖に建つ「マルサバ修道院」など、静けさと壮大な自然を楽しめるスポットも魅力です。
一方で、町の壁にはバンクシーをはじめとする現代アートが描かれ、政治的メッセージと芸術が融合するユニークな側面も持ち合わせています。
オリーブウッド工芸や伝統刺繍など、パレスチナの手仕事文化に触れられるのもベツレヘムならではの体験です。
宗教、歴史、芸術が調和するこの町は、ただの巡礼地にとどまらない、多層的な魅力にあふれています。

エリコ
エリコ(Jericho)は、パレスチナ東部のヨルダン川西岸に位置する、世界最古の町とされる歴史的都市です。
紀元前8000年ごろから人が住み始めたとされ、旧約聖書にも登場する「棕櫚(しゅろ)の町」として知られています。
標高は海抜マイナス258メートルと、世界で最も低い位置にある町でもあります。
乾燥したヨルダン渓谷にありながら、豊かな水源「スルタンの泉」を有し、緑あふれるオアシス都市として人々の暮らしを支えてきました。
観光名所としては、人類最古級の定住遺跡「テル・エッ・スルタン遺跡」が圧巻で、古代の城壁や塔の跡が現在も残されています。
また「誘惑の山」は、イエス・キリストが断食と悪魔の誘惑を受けたとされる聖地で、山頂近くの修道院へはロープウェイでアクセス可能です。
絶景と宗教的意義が融合したスポットです。
さらに、ウマイヤ朝時代の「ヒシャム宮殿」では、美しいモザイク床が観光客を魅了します。
エリコは、ナツメヤシや柑橘類などの農業も盛んで、オアシスの恵みを今に伝えています。
歴史、宗教、自然が交差するこの町は、パレスチナを訪れるなら外せない観光地です。

ラマッラー
ラマッラーは、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸中部に位置する、事実上の首都とされる都市です。
エルサレムの北約10〜15kmにあり、標高約880メートルの丘陵地に広がるこの町は、政治・経済・文化の中心として発展しています。
パレスチナ自治政府の本部や国際機関が集まる行政の要であると同時に、近代的なカフェやレストラン、大学やアートギャラリーなどが並ぶ洗練された都市風景が魅力です。
歴史的には16世紀にキリスト教徒のアラブ人によって建設され、オスマン帝国時代以降に多様な文化背景を持つ人々が定住し、現在の多様性を育んできました。
観光名所としては、アラファト議長の墓がある「ムカタア」や、文化イベントが行われる「ラマッラー文化宮殿」、歴史を感じられる「Dar Zahran Heritage Building」、現代アートを紹介する「Zawyeh Gallery」などがあります。
また、郊外には「アイーン・ケニヤ自然保護区」や「Taybeh Brewery/Winery」といった自然や味覚を楽しめるスポットも豊富です。
現代と伝統、政治と文化が交差するラマッラーは、パレスチナの“今”を感じられる都市として、訪れる価値のある場所です。

ガザ
ガザ地区は、パレスチナ南西部、地中海沿岸に広がる細長い地域で、歴史・地理・人口・社会情勢の面で特異な特徴を持ちます。
長さ約50km、幅5〜8kmの狭い土地に約200万人が暮らしており、世界で最も人口密度が高い地域の一つです。
そのうち約7割が難民やその子孫で、人口の約45%が14歳以下という非常に若い人口構成を持ちます。
古代からアフリカとアジアを結ぶ交易の要衝として栄え、オスマン帝国時代の遺構なども残る歴史都市でありながら、1948年のイスラエル建国以降、多くのパレスチナ難民が流入し、都市機能が大きく変化しました。
2007年以降はイスラム組織ハマスが実効支配し、イスラエルとエジプトによる封鎖下で物資や電力が不足し、失業率も極めて高い状態が続いています。
また、2008年以降繰り返される軍事衝突により、多くの民間人が犠牲となり、インフラの破壊も深刻です。
本来は美しい地中海の海岸線や伝統的な市場、モスク、工芸文化など観光資源も豊富ですが、現在は安全上の理由から観光は極めて困難になっています。
ガザは、歴史と文化の重みを持ちつつ、現代の人道的課題を象徴する地域でもあります。
聖サバ大修道院
聖サバ大修道院(マルサバ修道院)は、パレスチナ・ベツレヘムの東約15km、キドロン渓谷の断崖絶壁に建つ世界最古級の有人修道院です。
484年に聖サバ(サバス)によって創建されて以来、1500年以上にわたって修道士たちが祈りと修行の生活を続けており、東方正教会にとって非常に重要な聖地とされています。
修道院は、砂漠の険しい地形に見事に溶け込んでおり、荒涼とした大地と調和した壮麗な景観を生み出しています。
現在も十数人の修道士が暮らしており、水道や電気に頼らず、地下水を利用した質素な生活を続けるなど、創建当時の厳しい修道制が保たれています。
この修道院には、創設者である聖サバの遺体をはじめ、歴史的な殉教者の遺骨や岩窟、壁画など、宗教的・考古学的価値の高い遺産が数多く残されています。
ただし、古い伝統により女性は修道院内部に立ち入ることができませんが、近くの塔から修道院全体と渓谷の絶景を一望できます。
聖サバ大修道院は、静寂と祈りに包まれた空間であり、歴史・宗教・建築に関心のある人にとって、訪れる価値のある特別な場所です。

ヒシャム宮殿
ヒシャム宮殿は、パレスチナ・エリコ近郊に位置するウマイヤ朝時代の壮麗な遺跡で、8世紀中頃にカリフ・ヒシャム・ビン・アブドゥルマリクの時代に建設されたとされています。
747年の地震で大部分が崩壊したものの、良好な保存状態の部分も多く、考古学的価値の高い遺跡として注目されています。
約60ヘクタールにも及ぶ広大な敷地には、宮殿本体、浴場、モスク、農園跡などが含まれます。
浴場には床暖房を備えた先進的なハイポコースト式が採用され、当時の高度な建築技術を体感できます。
宮殿は中庭を中心にアーケード回廊が広がり、各隅には円形の塔が配置されるなど、洗練された構造が特徴です。
最大の見どころは、中東最大級のモザイク床で、特に「生命の樹」と呼ばれる作品は、動物や自然をモチーフにした豊かな色彩と緻密な幾何学模様が訪れる人々を魅了しています。
2021年には日本の支援により保護シェルターが完成し、500万個以上の石片からなる836㎡のモザイク床が一般公開されました。
ヒシャム宮殿は、初期イスラム建築と芸術の粋を体験できるだけでなく、遺跡保護や国際協力の現場としても重要な役割を担っています。
歴史や美術、文化遺産保護に関心のある人にとって、必見の文化観光スポットです。

誘惑の修道院
誘惑の修道院(Monastery of the Temptation/デール・クルントゥル)は、パレスチナ・エリコ近郊の「誘惑の山」中腹に建つギリシャ正教の修道院で、イエス・キリストが40日間の断食と悪魔の誘惑を受けた聖地として知られています。
6世紀に創建され、現在の建物は19世紀末に再建されたもので、断崖絶壁に沿って建てられた細長い構造が特徴です。
修道院の中心には、イエスが座って瞑想したと伝わる「聖なる岩」が祀られており、多くの巡礼者が訪れます。
ギリシャ正教の修道士たちが今も厳しい修道生活を続けており、伝統的な信仰が息づいています。
ギリシャ正教修道院としては珍しく、女性も内部に立ち入ることが可能です。
見どころのひとつは、標高約350メートルから望むヨルダン渓谷やエリコの街並みです。
ふもとからはケーブルカーでアクセスでき、手軽に断崖の絶景を楽しむことができます。
内部には美しいイコンやフレスコ画が並び、静寂の祈りの空間が広がっています。
また、山の斜面には初期修道士たちが使った洞窟も点在し、古代の苦行の歴史を感じることができます。
誘惑の修道院は、宗教的意義、壮大な自然、歴史的魅力を兼ね備えた、パレスチナ屈指の巡礼地・観光スポットになっています。

ミネラルビーチ(死海)
パレスチナのミネラルビーチは、死海沿岸に位置する天然のスパリゾートで、地球の神秘と美容効果を同時に体感できる貴重なスポットです。
死海は海抜マイナス約430メートル、地球上で最も低い場所にあり、塩分濃度は一般の海水の約10倍にも達します。
この高い塩分により、人は水に沈むことなく、誰でも簡単に浮遊するという不思議な体験が可能です。
死海の泥や水にはミネラルが豊富に含まれ、美肌や皮膚疾患の改善に効果があるとされ、古代より療養地としても知られてきました。
泥を全身に塗る“泥パック”は、しっとりとした肌触りと美容効果をもたらし、訪れる人々に人気のアクティビティです。
また、死海特有の青や緑に輝く水面、湖底の白い塩の結晶が織りなす風景は、幻想的で心を癒す絶景です。
ビーチによってはシャワーやカフェ、死海コスメを扱うショップもあり、快適に過ごすことができます。
ただし、目や口に水が入ると強い刺激となるため注意が必要で、一部ビーチは地盤沈下の影響で閉鎖されている場合もあります。
ミネラルビーチは、美容や健康、そして地球の自然の力を実感できる、パレスチナ屈指の癒しの観光地となっています。

まとめ
パレスチナは中東の歴史と文化が交差する地で、アラビア語を話し、伝統工芸や音楽、料理が豊かな独自文化を持っています。
ベツレヘムやエリコなど聖地・古代遺跡も多く、宗教・歴史・自然の観光名所が点在していますが、情勢により訪問には注意が必要です。