暑い夏を楽しむ旅行といえば海やリゾートが定番でしたが、近年はあえて涼しい場所へ出かける「クールケーションの旅」が注目されています。クールケーションは、暑さを避けながら自然や温泉、グルメなどを楽しむ新しい旅行スタイルです。
「クールケーションとは何?」「日本ならどこへ行けばいい?」「実際の旅では何をするの?」と気になる人も多いですよね。せっかくの夏休みだからこそ、暑さに耐えるだけではなく、快適に過ごせる旅を選びたいところです。
そこで当記事では、クールケーションの旅について、日本でおすすめの涼しい場所や具体的な過ごし方、予算や滞在期間に合わせたやり方まで紹介します。
- クールケーションの意味と注目される理由
- 日本でおすすめのクールケーション旅行先
- クールケーションで楽しみたい過ごし方
- 短期旅行から多拠点生活までの実践方法
クールケーションの旅とは?涼しい場所で過ごす新しい休暇スタイル
クールケーションの旅とは、夏の暑さを避けて、比較的涼しい地域で休暇を楽しむ旅行スタイルです。
単に気温の低い場所へ移動するだけではなく、自然散策や水辺のアクティビティ、温泉などを組み合わせて「涼しさそのもの」を旅の価値として楽しみます。
クールケーションの意味と注目される背景
クールケーションは「Cool」と「Vacation」を組み合わせた造語です。
従来の夏休みでは、暖かいビーチリゾートなどで太陽を楽しむ旅行が定番でしたが、酷暑が深刻になるにつれて、涼しい地域を目的地として選ぶ動きが広がっています。
海外ではカナダやフィンランド、アイスランドなど冷涼な国への旅行者が増えており、2024年夏には前年同期比で44%増加したというデータもあります。
クールケーションは一時的な流行というより、気候変動によって旅行先の選び方そのものが変化している流れと考えられます。
日本でも北海道や長野県などの避暑地への関心が高まっています。
暑さを我慢して観光するのではなく、気候に合わせて旅先を選ぶ考え方が、これからの夏旅行ではさらに身近になっていくかもしれません。
日本のクールケーションで人気の旅先
日本でクールケーションの旅を楽しむなら、北海道や高原エリア、標高の高い山岳地域などが候補になります。
特に長野県の蓼科高原や軽井沢、北海道の富良野、新潟県の湯沢などは、2026年夏の宿泊検索データでも旅行者の関心が高まっている地域です。
なかでも長野県阿智村浪合は、標高約1,100mに位置する冷涼なエリアとして注目できます。
2023年から2025年の7〜9月期では、夏の日平均気温が21.5℃で、名古屋の29.0℃と7.5℃の差がありました。
また、自然の中で涼しさを感じたい場合は、尾瀬や上高地などの高原散策、富岳風穴・鳴沢氷穴などの洞窟探検も選択肢になります。
クールケーションの旅では「涼しい場所に行く」だけでなく、涼しさを感じられる体験まで含めて旅先を選ぶのがおすすめです。
クールケーションの旅でおすすめの涼しい場所5選
クールケーションの旅先を選ぶなら、気温の低さだけでなく、現地で何を楽しめるかまで考えるのがおすすめです。
高原の森林浴、北海道の雄大な自然、温泉、鍾乳洞、観光列車など、涼しさと特別な体験を組み合わせると、夏の旅行がより充実します。
蓼科高原・軽井沢など長野の高原
長野県の高原は、都市部の暑さを避けながら自然を楽しみたい人に向いています。2026年7〜9月の宿泊検索データでは、蓼科高原への旅行者の関心が前年同期比277%増となり、今回紹介する国内避暑地の中でも大きな伸びを見せました。
軽井沢も前年同期比161%増と関心が高まっています。
さらに長野県阿智村浪合では、2023〜2025年の7〜9月の日平均気温が21.5℃で、名古屋の29.0℃より7.5℃低い結果でした。
高原では森林浴や散策を楽しみながら、都会とは異なる涼しい空気を体感できます。暑さを避けつつ自然の中でゆっくり過ごしたい場合、長野県はクールケーションの旅先として有力な選択肢です。
富良野など北海道の涼しい旅先
北海道もクールケーションの旅と相性がよい地域です。2026年7〜9月の宿泊検索では富良野への関心が前年同期比229%増となっており、国内の避暑地として注目が集まっています。
富良野では広大な田園風景や自然を楽しめるほか、2026年夏は長年親しまれてきた観光列車「富良野・美瑛ノロッコ号」の最後の夏となります。
涼しい北海道を訪れる目的に、車窓からの景色を楽しむ鉄道旅を組み合わせられる点も魅力です。
また、北海道占冠村の星野リゾート トマムでは、雲海テラスが極涼スポットとして紹介されています。気象条件によって気温が10℃を下回ることもあり、夏にしか味わえない涼しさを求める旅にも向いています。
越後湯沢・土合駅で楽しむひんやり旅
新潟県の湯沢も、夏のクールケーション候補として人気が高まっています。2026年7〜9月の宿泊検索では前年同期比202%増となっており、涼しい場所で過ごす旅行先として関心を集めています。
湯沢方面への移動では、群馬県の土合駅に立ち寄る旅も面白いでしょう。地下約70mにあるホームへ地上から462段の階段を下りる「モグラ駅」で、地下空間ならではのひんやりした空気を体験できます。
2026年夏には臨時特急「谷川岳もぐら」も運行されています。目的地だけを楽しむのではなく、列車に乗り、駅へ向かい、地底へ降りる過程まで旅に組み込むことで、クールケーションの旅に非日常感を加えられます。
富岳風穴・鳴沢氷穴など天然の冷蔵庫
真夏に強烈な涼しさを体験したいなら、鍾乳洞や風穴もおすすめです。山梨県の富岳風穴・鳴沢氷穴は、夏でも平均気温が約3℃とされ、まさに天然の冷蔵庫のような環境を体験できます。
ほかにも新潟県の佐渡金山では坑道内が年間を通じて約10℃前後、岐阜県の大滝鍾乳洞では約15℃前後、山口県の秋芳洞では四季を通じて17℃程度とされています。
こうした場所なら、エアコンとは違う自然の冷気を全身で感じられます。暑い屋外を長時間歩くのが苦手な人でも、涼しさそのものを目的にした観光として楽しみやすいでしょう。
星野リゾートで楽しむ極涼ステイ
宿泊そのものをクールケーションの目的にしたい場合は、涼しい場所にある滞在型施設を選ぶ方法があります。
2025年8月の平均最高気温を比較した調査では、星野リゾートの施設周辺で最も涼しかったのが群馬県片品村のLUCY尾瀬鳩待 by 星野リゾートで、平均最高気温は22.4℃でした。
2位は星野リゾート トマムの23.7℃、3位は界 奥飛騨の25.7℃、4位は界 草津の25.8℃、5位は界 ポロトの26.2℃です。標高や湖畔など、それぞれ異なる環境を生かした涼しい滞在ができます。
特にLUCY尾瀬鳩待は標高1,591mの鳩待峠に位置し、8月の日中平均気温は23℃程度です。朝晩はさらに気温が下がる場合があるため、真夏でも羽織るものを用意しておくと安心です。
クールケーションは何する?おすすめの過ごし方
クールケーションで何をするか迷ったら、「涼しい環境だからこそ楽しめる体験」を選ぶのがポイントです。
高原散策、水辺のアクティビティ、鍾乳洞、温泉、夜の観光などを組み合わせると、暑さを避けながら旅の満足度を高められます。
高原散策や森林浴を楽しむ
高原での散策や森林浴は、クールケーションの定番の過ごし方です。尾瀬国立公園の湿原ハイクや上高地の河童橋周辺、軽井沢の白糸の滝など、自然の中を歩きながら涼しい空気を楽しめる場所があります。
都市部の観光では、暑さによって移動するだけでも体力を消耗しがちです。一方で標高の高い地域では気温が低く、木陰や水辺を組み合わせることで、夏でも比較的快適に散策できます。
ただし高原は朝晩に冷え込むこともあります。クールケーションだからと薄着だけで出かけず、気温の変化に対応できる服装を準備しておくことが大切です。
鍾乳洞や地底駅で天然の涼を体験する
人工的な冷房ではなく自然の冷気を体験したい人には、鍾乳洞や地底空間がおすすめです。富岳風穴・鳴沢氷穴、秋芳洞、大滝鍾乳洞などは、夏の屋外とは大きく異なる温度環境を楽しめます。
鍾乳洞だけでなく、群馬県の土合駅も独特な涼しさを感じられるスポットです。地下約70mにあるホームまで462段の階段を下りるため、駅そのものが旅のアクティビティになります。
クールケーションでは、単に「涼しい場所に行く」だけではなく、温度差を旅の思い出に変える発想がポイントです。洞窟や地底駅なら、暑い夏だからこそ印象に残る体験になります。
温泉やひんやりグルメを味わう
涼しい土地では、温泉とひんやりグルメを組み合わせるのもおすすめです。
温泉で温まった後に涼しい外気を感じたり、湯上がりに冷たいジェラートを味わったりすると、夏ならではの爽快感を楽しめます。
日本のクールケーションでは、信州のそばや冷たいぶっかけうどん、ご当地ジェラート、冷凍みかんを使ったジュースなど、地域ならではの涼感グルメも旅の楽しみになります。
観光スポットを詰め込みすぎず、温泉や食事の時間をゆったり取るのもポイントです。涼しい環境で「動」だけでなく「静」の時間を楽しむことで、心身を休める旅行にできます。
夜の星空やナイトアクティビティを楽しむ
日中の暑さを避けるなら、夜の時間を旅の主役にする方法もあります。星空観賞や夜間のライトアップ、ナイト・ミュージアムなど、日没後だからこそ楽しめるアクティビティを組み込めます。
海外ではトルコのエフェソス遺跡を夜にめぐるナイト・ミュージアムや、ベレク地区のナイト・ゴルフなど、暑い時間帯を避けて観光する取り組みも紹介されています。
日本でも知床や万座温泉などで星空を楽しむ旅が考えられます。昼は無理に観光を詰め込まず、夕方から夜にかけて活動するスタイルなら、暑さを避けながら旅行時間を有効に使えます。
クールケーションのやり方は?予算と期間で選ぶ3つの方法
クールケーションのやり方は、旅行期間や予算によって大きく変わります。週末の短期旅行から数週間の滞在、さらに二地域居住まで、無理のない方法から始めるのがおすすめです。
週末に楽しむ短期クールケーション
まず試してみたいなら、日帰りや1泊2日の短期クールケーションが現実的です。越後湯沢、軽井沢、富士五湖エリアなど、都市部から比較的アクセスしやすい場所を選べば、移動時間と交通費を抑えながら涼しさを体験できます。
さらに鍾乳洞や風穴、滝、標高の高い展望スポットなど、無料または比較的低料金で楽しめる場所を組み合わせれば、旅行費用を抑えられます。1万円以下を目標にする場合は、交通費と食費を先に決めてから立ち寄り先を選ぶと計画しやすいでしょう。
子連れの場合は、気温だけでなく移動距離や休憩場所、医療機関へのアクセスも確認しておくと安心です。高原は朝晩に冷えることもあるため、子どもの着替えや羽織るものも準備しておきましょう。
数週間滞在する多拠点型クールケーション
仕事をリモートで続けられる人なら、数週間単位で涼しい地域に滞在する方法もあります。
住まいのサブスクサービスなどを利用し、北海道や高原地域に「暮らすように滞在」するスタイルです。
旅行中も仕事をする場合は、宿泊料金だけでなくWi-Fi環境、通信の安定性、電源、作業スペースなどを確認することが重要です。自然が豊かな場所でも、仕事に必要な通信環境が整っているとは限らないため、予約前の確認が欠かせません。
数週間の滞在なら、観光地を毎日巡る必要もありません。朝は仕事、夕方から散策や温泉というように、現地の暮らしに近いペースで過ごすことで、短期旅行とは違ったクールケーションの魅力を味わえます。
二地域居住で夏の拠点を移す方法
本格的に暑さを避けたいなら、夏だけ涼しい地域へ生活拠点を移す二地域居住という方法もあります。長野県阿智村浪合では、都市部の住まいを維持しながら高原の別荘を夏の拠点として活用する考え方が紹介されています。
さらに多拠点生活では、夏は北海道や標高の高い地域、冬は暖かい地域というように、季節に合わせて居場所を変えるライフスタイルも考えられます。単なる旅行ではなく、気候に合わせて暮らし方を変える発想です。
ただし購入や長期契約にはまとまった費用が必要になるため、まずは短期滞在や多拠点サービスで生活感を試してから検討する方法が現実的です。
クールケーションの旅をきっかけに、自分に合った夏の過ごし方を探してみるのもよいでしょう。
クールケーションのトレンドは今後どうなる?
クールケーションは、今後も気候変動とともに旅行市場へ影響を与える可能性があります。涼しい地域への旅行需要が増える一方で、人気エリアへの混雑集中や旅行時期の分散など、新しい課題も生まれています。
世界で冷涼な地域への旅行が増えている
世界ではすでに、暑さを避けて北の地域へ向かう旅行者の増加が見られます。
Virtuosoのデータでは、2024年6〜8月にカナダ、フィンランド、アイスランドなど冷涼な国への旅行者が前年同期比44%増加しました。
カナダの2024年夏の予約数も前年比20%増加しています。アラスカへのアメリカ国内線便数も2024年夏に前年比10%増加し、特にテキサス州ダラスからは30%増加しました。
一方、ギリシャでは夏の富裕層予約数が前年比17%減少しています。暑さが旅行先選びを左右する要因となり、従来の人気リゾートから冷涼な地域へ需要が移る動きは、今後も注目されそうです。
春や秋へのシーズン分散化も進む
クールケーションの広がりは、旅行先だけでなく旅行時期の変化にもつながっています。
真夏の暑さを避けて、春や秋に旅行する「シーズン分散化」が進んでおり、イタリアでは3月と5月のホテル稼働率が2019年の同月と比べてほぼ2倍に増加しました。
夏休みの時期だけに旅行者が集中する従来型の観光から、気候のよい時期へ旅行をずらす考え方が広がれば、観光地の需要を年間で平準化できる可能性があります。
旅行者にとっても、真夏の混雑や高い気温を避けられるメリットがあります。
クールケーションを計画するときは、必ずしも8月にこだわらず、気候と料金のバランスがよい時期を選ぶ方法も検討できます。
人気避暑地の混雑や人手不足が課題に
一方で、クールケーションの人気が高まれば、涼しい地域への旅行者が集中するという問題も考えられます。
観光需要が春や秋、山岳部などへ分散すると、これまで閑散期だった地域でも年間を通じて混雑する可能性があります。
実際に、コロラド州では年間を通じて渋滞が発生するようになったという指摘があります。旅行シーズンが長期化すれば、観光業で年間を通して働き手を確保する必要が生じ、人手不足が深刻になる懸念もあります。
クールケーションは旅行者にとって合理的な選択である一方、地域側への負荷も考える必要があります。人気スポットだけに集中せず、時期や場所を分散させながら旅を楽しむことが、これからの旅行では大切になりそうです。
まとめ:クールケーションの旅で暑い夏を快適に楽しもう
当記事では、クールケーションの旅について紹介しました。クールケーションとは、暑い時期に涼しい場所へ出かけ、自然や温泉、グルメなどを楽しむ新しい休暇スタイルです。
日本では、蓼科高原や軽井沢などの長野県、富良野などの北海道、湯沢周辺などが候補になります。
高原散策や森林浴だけでなく、富岳風穴・鳴沢氷穴などの天然の冷蔵庫、土合駅の地底空間、観光列車などを組み合わせれば、涼しさそのものを旅の体験にできます。
クールケーションのやり方も、日帰りや週末旅行、数週間の多拠点生活、夏だけ拠点を移す二地域居住までさまざまです。世界的にも冷涼な地域への旅行需要が伸びている一方、混雑や人手不足などの課題も生まれています。
暑さを我慢するだけではなく、気候に合わせて旅先や過ごし方を選ぶのがクールケーションの魅力です。まずは近場の涼しい場所への小さな旅から、今年の夏を快適に楽しんでみてはいかがでしょうか。

