日本三大SLとは?まずは結論から紹介
SL(蒸気機関車)とは何か
SLとは「Steam Locomotive(スチーム・ロコモーティブ)」の頭文字を取った言葉で、日本語では「蒸気機関車」と呼ばれます。石炭を燃やして水を沸騰させ、その時に発生する高圧の蒸気の力を利用して大きな車輪を動かす仕組みです。
現代の主流である新幹線や電車のように電気やディーゼル燃料でスマートに走るのではなく、石炭と水という自然の恵みをエネルギーに変えて泥臭く、しかし力強く突き進むのが最大の特徴です。
車体から激しく吹き出す黒い煙、大地を揺らすような駆動音、そして遠くまで響き渡る哀愁を帯びた汽笛の音。SLは単なる移動手段ではなく、それ自体が「生き物」のような圧倒的な存在感を放つ乗り物なのです。
なぜ今でも人気があるのか
昭和の時代に一度は現役を退いた蒸気機関車ですが、令和の現代においてもその人気は衰えるどころか、ますます高まっています。なぜこれほどまでに人々を魅了するのでしょうか。
その理由は、デジタル化された現代社会では味わえない「五感で楽しむレトロな旅情」にあります。
シュッシュッと規則正しく刻まれるドラフト音、車内に漂うほのかな石炭の香り、ガタゴトと心地よく揺れる木造風の客車。
それらすべてが、忙しい日常を忘れさせてくれる最高の癒やしとなります。
また、子どもにとっては絵本やアニメの世界から飛び出してきたような大迫力のエンターテインメントであり、シニア世代にとっては若き日の思い出を呼び覚ますノスタルジーの象徴でもあります。
世代を超えて感動を共有できるからこそ、今もなお多くの人々がSLを目指して旅に出るのです。
本記事で紹介する日本三大SL
実は「日本三大SL」という公的な定義や、国鉄・JRなどが定めた公式な基準はありません。しかし、日本全国で運行されている蒸気機関車 観光列車の中で、歴史の深さ、知名度の高さ、そして乗客からの人気において、誰もが「これぞ日本を代表するSLだ」と認める3つの名列車が存在します。
本記事では、この3列車を現代の「日本三大SL」として徹底解説します。
- SLばんえつ物語(JR東日本:新潟県・福島県)
- SLやまぐち号(JR西日本:山口県・島根県)
- 大井川鐵道SL列車(大井川鐵道:静岡県)
これらは、まさに「一度は乗りたい日本の宝」と呼ぶにふさわしいSLたちです。それぞれの魅力や特徴を詳しく見ていきましょう。
日本のSLの歴史をわかりやすく解説
日本初の鉄道と蒸気機関車
日本の鉄道の歴史は、蒸気機関車の歴史そのものです。
1872年(明治5年)、新橋〜横浜間で日本初の鉄道が開業した際、イギリスから輸入された蒸気機関車が1号機関車として走り始めました。
当時の人々にとって、煙を吐きながら文明の利器として疾走するSLの姿は、まさに近代化(文明開化)の象徴そのものでした。
その後、日本は独自の技術でSLを国産化するようになります。旅客用の決定版として名高い「C57形」や、日本で最も多く製造され「デゴイチ」の愛称で親しまれた貨物用の「D51形」など、数々の名車が誕生し、日本全国の流通と人々の移動を支える大黒柱となりました。
高度経済成長とSLの引退
昭和30年代に入り、日本が高度経済成長期を迎えると、鉄道の世界にも大きな変化が訪れます。スピードが遅く、坂道に弱く、さらに大量の煙を出すSLは、効率性と環境面から時代遅れとみなされるようになってしまったのです。
国鉄(現在のJR各社など)は「無煙化(むえんか)」へと舵を切り、電気で走る電車や、軽油で走るディーゼルカーへの切り替えを急速に進めました。
その結果、1975年(昭和50年)12月、室蘭本線での運行を最後に、日本の現役旅客列車からSLは完全に姿を消すこととなりました。
この時、多くの鉄道ファンや市民が別れを惜しみ、いわゆる「SLブーム」が巻き起こりました。
観光列車として復活した理由
現役を引退し、全国の公園や博物館で静かに眠るはずだったSLですが、劇的な復活を遂げることになります。
そのきっかけを作ったのが、1976年に日本で初めてSLの動態保存(動く状態で保存すること)と定期運行を再開した静岡県の大井川鐵道でした。
さらに1979年には、国鉄による「SLやまぐち号」の運行がスタートします。
SLが復活した最大の理由は、「消え去りゆく産業遺産を守るため」という文化的価値の保存、そして「SLを起爆剤にして沿線地域を元気にしたい」という観光振興の願いでした。
単なる移動手段としての役割を終えたSLは、乗ること自体が目的となる蒸気機関車観光列車という新しい価値を纏って、奇跡の復活を果たしたのです。
SLばんえつ物語|東北を代表する人気SL
SLばんえつ物語とは
「SLばんえつ物語」は、1999年に運行を開始したJR東日本が誇る人気のSL列車です。
牽引する機関車は「C57形180号機」。かつて新潟県内の学校に静態保存されていた車両を、多くの人々の情熱によって奇跡的に復元させました。
スマートで美しいボディラインから「貴婦人(きふじん)」の愛称で親しまれており、品格のある佇まいが多くのファンを魅了しています。
会津若松〜新津間を走る絶景路線
この列車が走るのは、新潟県の新津(にいつ)駅から福島県の会津若松(あいづわかまつ)駅までを結ぶ磐越西線(ばんえつさいせん)です。片道約111キロメートル、所要時間約3時間30分をかけてゆったりと走ります。
磐越西線は、阿賀野川(あがのがわ)の雄大な流れに沿って走る、日本屈指の日本三大絶景列車候補とも言える路線です。山あいをぬうように走り、美しい鉄橋を渡る姿は絵画のような美しさです。
四季折々の車窓風景
「SLばんえつ物語」の最大の魅力は、移り変わる四季の美しさにあります。
- 春:残雪の山々を背景に、沿線に咲き誇る桜や新緑の鮮やかなコントラストを楽しめます。
- 夏:深い緑の中を、涼しげな阿賀野川の水面をキラキラと反射させながら駆け抜けます。
- 秋:燃えるような紅葉が山々を彩り、SLの吐き出す白煙と見事な調和を見せます。
どの季節に訪れても新鮮な感動があり、何度もリピートしたくなる魅力に溢れています。
家族旅行に人気の理由
「SLばんえつ物語」は、子どもの鉄道旅行の目的地として抜群の人気を誇ります。その秘密は客車の設備にあります。
12系客車を大改造した車内は、大正ロマンを彷彿とさせるレトロでおしゃれな雰囲気。
1号車には、子どもたちが自由に遊べる「オコジョ展望室」があり、アスレチックのような遊具や、大きな車窓から景色を眺められるスペースが用意されています。
さらに、車内ではオリジナルグッズの販売や、乗車記念スタンプ、じゃんけん大会などのイベントも開催され、長時間の乗車でも子どもたちが退屈することなく、笑顔で過ごせる工夫が満載です。
おすすめの乗車シーズン
特におすすめのシーズンは、新緑が美しい5月と、紅葉が見頃を迎える11月です。
特に11月は、ひんやりとした秋の空気によってSLの蒸気が白くくっきりと立ち上るため、最もダイナミックで美しいSLらしい姿を見ることができます。
会津若松での鶴ヶ城観光とセットにした家族旅行の計画を立てるには最高の季節です。
SLやまぐち号|“貴婦人”が牽引する名列車
SLやまぐち号とは
1979年(昭和54年)8月、国鉄のSL復活プロジェクトの第一号として誕生したのが「SLやまぐち号」です。
日本の観光SLのパイオニアであり、西日本を代表する名列車として45年以上の歴史を誇ります。
主に牽引を担当するのは、先述の「SLばんえつ物語」と同じく「貴婦人」と呼ばれるC57形1号機。長年、山口線の顔として走り続けている、日本のSL復活劇のシンボル的存在です。
山口線の魅力
「SLやまぐち号」は、山口県の新山口駅から島根県の津和野(つわの)駅までの62.9キロメートルを約2時間で結びます。
新山口駅を出発した列車は、のどかな田園風景を抜け、次第に険しい中国山地へと足を踏み入れていきます。
途中の「仁保(にほ)駅」から「篠目(しのめ)駅」にかけては、急勾配の峠越えがあり、機関車が「デゴイチ」にも負けない猛烈な煙と音を立てて坂を登る、SL本来の力強さを最も体感できるスリリングな路線です。
C57形蒸気機関車の歴史
「SLやまぐち号」を語る上で欠かせないのが、C57形1号機という機関車そのものの歴史です。1937年(昭和12年)に製造されて以来、一度も車籍(鉄道車両としての登録)を抹消されることなく、現役のまま生き続けている奇跡の車両です。
昭和の無煙化によって一時は定期運行を終えましたが、梅小路蒸気機関車館(現在の京都鉄道博物館)での動態保存を経て山口線へ。
その洗練された流線型の美しさと、激しい峠越えに挑む力強いギャップが、鉄道ファンのみならず多くの観光客の心を掴んで離しません。
沿線観光とセットで楽しむ方法
終着駅である島根県の津和野は、「山陰の小京都」と呼ばれる美しい城下町です。
白壁の街並みや、掘割(水路)を泳ぐ色鮮やかな鯉、初夏に咲く花菖蒲など、まるで行き交うSLのように時間がゆっくり流れるレトロな空間が広がっています。
新山口から「SLやまぐち号」に揺られて津和野に到着し、名物の「うずめ飯」を味わいながら歴史ある街並みを散策する。そんな大人の贅沢な「SL列車おすすめルート」が確立されています。
撮影スポットの見どころ
山口線には、全国からカメラマンが集まる有名な撮影スポットが点在しています。
特に有名なのが、長門峡(ちょうもんきょう)駅近くの鉄橋や、本俣賀(ほんまたが)周辺のストレート。
そして何といっても仁保駅発車直後の25パーミル(1000メートルの進む間に25メートル登る傾斜)の急勾配です。
ここで見られる、空を覆い尽くさんばかりの爆煙は圧巻の一言。乗るだけでなく、「見る」「撮る」楽しさもトップクラスです。
大井川鐵道SL列車|日本一有名なSL路線
大井川鐵道とは
静岡県にある大井川鐵道(おおいがわてつどう)は、日本の鉄道ファンにとって「聖地」と呼ばれる特別な路線です。
なぜなら、1976年に日本で初めてSLの動態保存・営業運転を再開したパイオニアであり、年間を通じて日本で最も多くのSLを運行している民間鉄道だからです。
大井川本線(新金谷〜千頭間、一部区間は運休・バス代行の場合あり)を走るSL列車は、一歩足を踏み入れた瞬間から、昭和の時代へとタイムスリップしたかのような強烈なノスタルジーを感じさせてくれます。
日本で唯一複数のSLが定期運行する魅力
JR各社のSLは基本的に特定の1台が運行していますが、大井川鐵道は異なります。「C11形190号機」「C10形8号機」「C56形44号機」など、貴重な小型・中型蒸気機関車を複数台保有しています。
そのため、日によって牽引する機関車が変わり、時にはSL同士がすれ違うシーンや、2台のSLが前後に繋がって客車を引っ張る「重連(じゅうれん)運転」といった、他では絶対に見られない豪華な光景を目にすることができます。まさに、生きているSL博物館です。
川根路の絶景とSL
大井川鐵道の車窓を彩るのは、雄大な大井川の流れと、日本一の茶どころである静岡ならではの広大な茶畑(川根茶の産地)です。
緑に輝く茶畑の真ん中を、真っ黒なSLが白い煙をたなびかせながら走る姿は、日本の原風景そのもの。窓を開ければ、お茶の爽やかな香りと、ほんのりと混ざる石炭の匂いが旅情を誘います。
吊り橋や温泉郷も点在しており、日本三大ローカル鉄道の魅力を凝縮したような美しい景観が続きます。
レトロ駅舎や鉄道文化
大井川鐵道の魅力は列車本体だけにとどまりません。起点となる駅や沿線の木造駅舎、そして客車に至るまで、徹底して「本物の昭和」が残されています。
使用されている客車は、昭和10〜30年代に製造された「旧型客車」。
冷房はなく、天井で青い扇風機が回り、座席は懐かしい青色のクロスシート。窓は手動で開閉するタイプです。
この徹底したレトロへのこだわりが、映画やドラマのロケ地としても重宝される理由です。
鉄道ファンの聖地と呼ばれる理由
単にレトロなだけでなく、大井川鐵道は「きかんしゃトーマス」の公式イベント(Day out with Thomas)を日本で初めて開催したことでも知られ、ファミリー層へのアピールも抜群です。
本物のSLがトーマスやジェームスに変身して走る姿は、全国の鉄道好きの子どもを持つ親にとって、一生に一度は見せたい大イベントとなっています。
マニアックな鉄道文化の保存と、最先端のキャラクターエンタメが見事に融合しているからこそ、ここはすべての鉄道ファンの聖地であり続けているのです。
【比較】日本三大SLの違いを徹底比較
ここまで紹介した日本三大SLですが、「結局、自分はどこに行けばいいの?」と迷ってしまう方も多いはず。そこで、4つの異なる視点からそれぞれのSLを徹底比較してみました。あなたの旅の目的にぴったりのSLを見つけてください。
景色が美しいのはどこ?
車窓からの景色の美しさや、大自然のダイナミックさを重視するなら、「SLばんえつ物語」がイチオシです。
新潟と福島をまたぐ磐越西線は、阿賀野川の美しい渓谷美、そして会津に近づくにつれて見えてくる雄大な磐梯山(ばんだいさん)など、とにかく車窓のスケールが大きいです。
四季折々の変化が最もはっきりしているのも特徴で、絶景を目的にした観光列車選びなら間違いありません。
初心者向きなのはどこ?
SLに初めて乗る、または快適な旅を最優先したいという初心者の方には、「SLやまぐち号」がおすすめです。
「SLやまぐち号」で使用されている客車(35系)は、2017年に新造された「レトロ客車」です。
見た目は戦前のアンティークな雰囲気を完璧に再現していますが、中身は最新鋭。最新の冷暖房が完備されており、バリアフリー対応の多目的トイレや、SLの仕組みを学べる体験型の展示スペース(1号車・5号車)もあります。
「SLの雰囲気は味わいたいけれど、暑さや寒さ、古い設備は少し不安」という方でも安心して100%楽しめます。
鉄道ファン向けなのはどこ?
「本物のレトロ」や、よりディープな歴史的価値を求める鉄道ファン、カメラマンには、迷わず「大井川鐵道SL列車」をおすすめします。
冷房なし、昭和の扇風機、ガタガタと鳴る床板など、JRのSL列車がある程度近代化されているのに対し、大井川鐵道はあえて「不便な古さ」をそのまま残しています。
複数のSLが在籍しているため、機関車ごとの音の違いや挙動の違いを楽しめるのもマニア心をくすぐります。
家族旅行向きなのはどこ?
小さな子ども連れのファミリーが最も笑顔になれるのは、甲乙つけがたいですが「大井川鐵道(トーマス号運行期間中)」、または通年であれば「SLばんえつ物語」です。
「SLばんえつ物語」のオコジョ展望室(キッズスペース)は、子どもが体を動かして遊べるため、3時間半という長旅でも飽きることがありません。
一方、大井川鐵道のトーマス号は、子どもにとって夢が現実になる瞬間です。子どもの年齢や趣味に合わせて選ぶと良いでしょう。
実は人気!三大SL以外のおすすめ蒸気機関車
日本三大SL以外にも、日本国内には地域の人々に愛され、個性に溢れた素晴らしいSL列車が運行しています。ここでは、ぜひチェックしておきたい4つの名列車を紹介します。
SL冬の湿原号
- 運行区間:JR北海道(釧網本線:釧路〜標茶)
- 特徴:日本で唯一、一面の銀世界(冬の釧路湿原)を駆け抜けるSLです。1月〜3月の期間限定で運行されます。車内には昔懐かしい「だるまストーブ」が設置されており、そこでスルメを焼いて食べるのが名物。運が良ければ、車窓から国の天然記念物であるタンチョウやエゾシカを見ることもできる、非常に人気の高いプレミアムなSLです。
SLパレオエクスプレス
- 運行区間:秩父鉄道(熊谷〜三峰口)
- 特徴:都心から最も近い場所を走るSLとして有名です。東京から日帰りで気軽にアクセスできるため、週末のファミリーお出かけスポットとして定着しています。「都心から一番近い蒸気機関車」でありながら、荒川の清流や秩父の山々といった本格的な自然の中を走るため、満足度は非常に高いです。
SLもおか
- 運行区間:真岡鐵道(下館〜茂木)
- 特徴:栃木県・茨城県を走るローカル線です。SLの形をしたユニークな駅舎(真岡駅)があるなど、地域全体でSLを盛り上げています。春には沿線に桜と菜の花が同時に咲き誇るスポットがあり、ピンクと黄色の絨毯の中を黒いSLが通り抜ける美しい光景は、毎年多くのカメラマンを熱狂させています。
SLぐんま
- 運行区間:JR東日本(信越本線:高崎〜横川 / 上越線:高崎〜水上)
- 特徴:東日本エリアのSLのメッカ、群馬県を走る列車です。「SLぐんま みなかみ」や「SLぐんま よこかわ」の名前で運行されます。馬力の強い大型SL「D51形498号機(デゴイチ)」や「C61形20号機」が在籍しており、温泉地(水上温泉など)や鉄道の歴史スポット(碓氷峠鉄道文化むら)への観光ルートとして不動の人気を誇ります。
SL旅行を楽しむためのポイント
SLへの乗車は、普通の電車旅とは少し勝手が異なります。最高の思い出を作るために、事前に押さえておくべき4つのポイントを伝授します。
指定席の予約方法
現在、日本で運行されているほとんどのSL列車は、「全車指定席」となっています。つまり、事前に座席券(指定席券)を購入しておかなければ、当日にふらっと行って乗ることはできません。
JRのSL(ばんえつ物語、やまぐち号、SLぐんまなど)は、乗車日の1ヶ月前の午前10時から、JRのネット予約サイト(えきねっとやe5489)またはみどりの窓口で一斉に発売されます。
人気の週末やシーズン中のチケットは数分で売り切れることもあるため、旅行が決まったら発売日をカレンダーに登録しておきましょう。
大井川鐵道の場合は、公式ホームページからの事前ネット予約が基本となります。
車窓を楽しむ座席選び
SLの旅をより深く楽しむなら、座席の「向き」と「位置」に注目しましょう。
- 進行方向を向く席を確保する:ボックス席の場合、進行方向を向いている方が景色を自然に楽しめます。
- あえて機関車に近い車両を選ぶ:SL特有の「ドラフト音」や「汽笛」をダイナミックに楽しみたいなら、機関車のすぐ後ろ(1号車など)の車両がおすすめです。
- 窓の開く車両なら煙を体感:大井川鐵道などの旧型客車では、窓を開けることができます。トンネルに入る前に窓を閉めるスリルや、入った後に少しだけ入り込んでくる石炭の煙の匂いを体験するのもSL旅の醍醐味です(白い服を着ている時は煤汚れに少し注意しましょう!)。
撮影におすすめの場所
乗客としてSLを楽しむ場合、撮影のベストタイミングは「出発前のホーム」と「途中の長時間停車駅」です。
多くのSL列車は、途中の主要駅で水分補給や安全点検のために10分〜15分ほど停車します(例:SLばんえつ物語の津川駅、SLやまぐち号の地福駅など)。
この停車時間を利用してホームに降りれば、間近で息を吐く機関車の姿をバックに記念撮影をすることができます。
また、終着駅での「転車台(てんしゃだい:SLの向きを変える回転台)」による方向転換シーンも、絶対に見逃せないシャッタースポットです。
子ども連れで楽しむコツ
小さな子どもと鉄道旅行を成功させるための最大のコツは、「お気に入りグッズの持参」と「耳の保護(心の準備)」です。
SLの汽笛は、想像以上に大きな音がします。駅のホームやトンネル内で突然鳴り響く汽笛に驚いて、泣き出してしまう小さなお子さんも少なくありません。
「これから大きな音が鳴るよ、かっこいい音だよ」と事前に優しく教えてあげると良いでしょう。
また、車内限定のお弁当やスイーツ(SLをモチーフにした黒いカレーやアイスクリームなど)を一緒に食べるのも、子どもにとって忘れられない楽しい思い出になります。
なぜSLは今も人々を魅了するのか
効率性が重視される令和の時代に、なぜ私たちはわざわざ時間と手間をかけて、時速50キロメートルそこそこで走る古い鉄の塊に会いに行くのでしょうか。その理由は、効率の先にある「ロマン」にあります。
迫力ある煙と汽笛
SLには、電気の乗り物にはない「生命感」があります。
ボイラーから漏れ出る熱気、シュッシュッと規則正しく刻まれるドラフト音は、さながら機関車の呼吸であり心臓の鼓動のようです。
そして、ここぞという場面で大空へ向かって放たれる漆黒の煙と、山々にこだまする重低音の汽笛。その圧倒的なダイナミズムは、私たちの本能的な感動を呼び起こします。
こればかりは、動画や写真ではなく、現地で五感を使って体感しなければ絶対に分からない魅力です。
レトロな旅情
SLの客車に一歩足を踏み入れると、そこには現代の機能美とは真逆の、「無駄を楽しむ贅沢な空間」が広がっています。
木の温もり、柔らかい白熱灯の光、ゆっくりと流れる景色。スマホの画面から目を離し、ただガタゴトという音に身を委ねて車窓を眺める。
SLに乗ること自体が、現代人にとって最高の「デジタルデトックス」であり、贅沢な時間の使い方=レトロな旅情そのものなのです。
日本の鉄道文化を感じられる
私たちが今、当たり前のように新幹線で快適に移動できるのは、かつてこの国を支えた蒸気機関車と、それを運行し続けてきた先人たちの技術の積み重ねがあるからです。
SLの運行を維持するためには、熟練の職人による部品の手作りや、気の遠くなるような毎日のメンテナンスが必要です。
SL列車に乗るということは、日本の近代化を支えた素晴らしい「ものづくり精神」と「鉄道文化」を肌で感じ、それを未来へ繋ぐ応援団の仲間入りをすることでもあるのです。
日本三大SLに関するよくある質問
日本で一番人気のSLはどれ?
知名度と乗客数、そしてエンターテインメント性の高さで言えば、年間を通じて多くの本数を運行し、キャラクターイベントも手がける「大井川鐵道SL列車」が日本一の集客力を誇ります。
一方、鉄道ファンや絶景を愛する大人の旅行者からの純粋な人気投票では、美しい車体を持つ「SLばんえつ物語」や、歴史ある「SLやまぐち号」が常にトップを争っています。
現在も運行しているSLは何本ある?
日本全国で、現在も本線の線路を走ることができる(動態保存されている)営業用のSLは、イベント用や季節限定のものを合わせておよそ10〜12機前後です。
ただし、SLは非常にデリケートな乗り物であり、数年に一度の「全般検査」と呼ばれる大規模な車検期間に入ると、長期間運休となります。
運行スケジュールは各鉄道会社の公式サイトで必ず最新情報を確認してください。
子どもでも楽しめる?
間違いなく楽しめます! 特に「SLばんえつ物語」のキッズスペースや、「大井川鐵道」のきかんしゃトーマス公式イベントなどは、子どもが主役になれる最高の空間です。
五感に響くSLの体験は、子どもの好奇心や感受性を豊かに育てる最高の知育旅(タビイク)にもなります。
初心者におすすめのSLは?
都心にお住まいで、まずは気軽にSLを体験してみたいなら、埼玉県の「SLパレオエクスプレス(秩父鉄道)」がアクセス抜群でおすすめです。
旅行として本格的なSL観光を満喫したい場合は、車内設備が新しく快適な「SLやまぐち号」、または沿線の観光見どころが凝縮されている「大井川鐵道」を選べば、初心者でも失敗のない素晴らしい旅が約束されます。
まとめ|日本三大SLは鉄道ロマンを体験できる特別な列車
日本を代表する「日本三大SL」は、それぞれが異なる唯一無二の物語と魅力を持っています。
ばんえつ物語は絶景の旅
雄大な阿賀野川と美しい山々に抱かれ、四季折々の絵画のような美しさを車窓から楽しむ、まさに「絶景の旅」です。
やまぐち号は歴史の旅
「貴婦人」が激しい峠越えに挑むドラマを見守り、終着駅の美しい城下町・津和野でノスタルジーに浸る、極上の「歴史の旅」です。
大井川鐵道はSLの聖地
昭和の空気感をそのまま残した旧型客車に揺られ、茶畑の緑とお茶の香りに包まれながら鉄道の原点に触れる、文字通りの「聖地の旅」です。
一度は本物の蒸気機関車に乗ってみよう
新幹線や飛行機を使えば、どこへでも速く、効率的に行ける現代だからこそ、あえて真っ黒な煙を吐き、汽笛を響かせてゆっくりと進むSLの旅には、言葉にできない特別な価値があります。
次の休みには、大切な家族や友人を誘って、あるいは贅沢な一人旅として、日本三大SLの汽笛の音を聴きに出かけてみませんか?そこには、普段の生活では決して出会えない、本物の「鉄道ロマン」があなたを待っています。

