近江鉄道は「不便」という声が多い一方で、2024年度には31年ぶりの黒字化を見込み、2026年にはICOCA導入や駅の運用変更など大きな転換期を迎えています。
しかし、近江鉄道の不便さは本当に改善されるのでしょうか。
また、近江鉄道の運賃が高い理由や、上下分離方式による黒字化の仕組みも気になるところですよね。
そこで当記事では、近江鉄道が不便といわれる理由を整理するとともに、近江鉄道の今後や存続の可能性について分かりやすく解説します。
- 近江鉄道が不便といわれる理由
- 近江鉄道の運賃が高い理由と黒字化の仕組み
- 上下分離方式や近江鉄道線管理機構の役割
- 近江鉄道の今後と利便性改善の見通し
近江鉄道が不便といわれる理由
近江鉄道が不便といわれる理由は、単に列車の本数が少ないだけではありません。
運賃の高さや駅の無人化、利用方法の変更など、複数の要因が重なっています。
2026年3月にはICOCA導入によって利便性が向上する一方、新たな戸惑いが生まれる可能性もあります。
ここでは、多くの利用者が感じている代表的な理由を見ていきましょう。
運行本数が少なく待ち時間が長い
近江鉄道が不便と感じられる最大の理由は、運行本数の少なさです。
時間帯によっては1時間に1本程度しか運行されず、乗り遅れると次の列車まで長時間待つことになります。
通勤や通学では乗り継ぎにも影響するため、「1本逃すと予定が大きく狂う」という声も少なくありません。
実際に利用者アンケートでも「1時間に1本しかなく、遅れると致命的」という意見が挙がっています。
車社会である滋賀県では自家用車との競争が厳しく、列車本数の少なさが利用者減少につながる一因となっています。
今後も利用者数の増加と運行コストのバランスを取りながら、ダイヤ改善が進むかどうかが注目されています。
運賃が高く「日本一高い」といわれる理由
近江鉄道は「日本一運賃が高い」といわれることがあり、不便さを感じる理由の一つになっています。
利用者数の減少が長年続いたことで、一人あたりが負担する運営コストが大きくなり、運賃水準も高く設定されてきました。
休日向けの「1デイスマイルチケット」も2026年から毎日利用可能になる一方、価格は900円から1,500円へ値上げされます。
「近距離でも高く感じる」「家族で利用すると負担が大きい」という声が多く、マイカー利用へ流れる要因にもなっています。
ただし、近江鉄道は地域交通を維持するための役割も担っており、単純な値下げが難しい事情もあります。
無人化とICOCA導入で利用方法が大きく変わる
2026年3月からはICOCA導入と同時に、多くの駅で完全無人化が実施されます。
彦根駅・八日市駅・貴生川駅・近江八幡駅以外は終日無人駅となり、切符販売や窓口対応は基本的になくなります。
普通乗車券や回数券も販売終了となり、現金利用者は整理券方式へ移行します。
また、多くの駅では入場時にICカードをタッチし、降車時は車内の読み取り機で精算する方式へ変わるため、初めて利用する人や高齢者は戸惑う場面もあるでしょう。
一方でICOCA対応によりキャッシュレス利用が可能となり、小児ICOCAでは全線どこでも1乗車10円になるなど、新しいメリットも誕生します。
詳しい最新情報は(出典:近江鉄道)でも確認できます。
近江鉄道の黒字はなぜ実現したのか
近江鉄道は2024年度に31年ぶりの黒字化を見込みました。
しかし、利用者が急増したわけではありません。
黒字化の背景には「上下分離方式」という経営の仕組みの変更があります。
ここでは、黒字になった理由と、利用者への影響を分かりやすく解説します。
上下分離方式とは何か
上下分離方式とは、鉄道施設を保有する組織と列車を運行する会社を分ける仕組みです。
2024年4月から近江鉄道では、線路や駅などの施設を一般社団法人近江鉄道線管理機構が保有し、近江鉄道株式会社は列車の運行に専念する体制へ移行しました。
これまで鉄道会社が負担していた老朽化した橋梁や線路、駅舎の維持費を自治体側が支えることで、会社の経営負担は大幅に軽減されています。
その結果、30年以上続いた赤字経営から黒字へ転換することができました。
つまり、黒字化は利用者数の急増ではなく、経営構造の見直しによって実現したものと理解すると分かりやすいでしょう。
近江鉄道線管理機構の役割
近江鉄道線管理機構は、鉄道施設を維持・管理する「大家さん」のような役割を担っています。
駅や線路などの資産を保有し、自治体からの負担金を活用して大規模な修繕や更新を進めています。
これまで近江鉄道株式会社だけでは対応が難しかった設備更新も実施しやすくなりました。
一方で、この仕組みは自治体の財政支援によって成り立っています。
そのため、管理機構では地域全体で鉄道を支える仕組みとして、将来的な負担とのバランスも重要な課題とされています。
利用者にとっては直接見えにくい組織ですが、近江鉄道の存続を支える重要な存在といえます。
黒字化しても運賃が安くならない理由
黒字になったからといって、すぐに運賃が値下げされるわけではありません。
黒字の多くは維持管理費を自治体が負担するようになったことによるものであり、収益が大幅に増えたわけではありません。
過去30年間で累積した営業損失は約66億円に達しており、設備更新にも継続的な資金が必要です。
さらに利用者数はピーク時から大きく減少しており、人口減少の影響も続いています。
そのため、経営の安定化を優先する必要があり、運賃を大幅に引き下げられる状況ではありません。
今後は利用者を増やしながら経営を安定させられるかが、運賃やサービス改善の鍵になります。
近江鉄道はいらないという意見は本当なのか
「近江鉄道はいらない」という意見も見られますが、実際には鉄道を廃止した場合の社会的影響は想像以上に大きいと試算されています。
ここでは存続が選ばれた理由を紹介します。
廃止した場合に発生する社会的コスト
鉄道を廃止すると、代替交通の整備に多額の費用が必要になります。
試算では、代替バス導入だけでも約29.6億円の初期投資と年間約4.3億円の赤字が発生するとされています。
さらに道路整備やスクールバスの運行など、新たな行政負担も増える見込みです。
単純に鉄道をなくせば支出が減るわけではなく、別の形で大きな費用が必要になる点は見逃せません。
そのため、「いらない」という意見だけでは判断できない複雑な事情があります。
クロスセクター効果が示した存続のメリット
近江鉄道の存続は、行政全体の支出を抑える効果があると評価されています。
鉄道廃止による社会的損失は年間約19億円から最大55億円と試算されており、道路混雑や医療費の増加まで含めると影響は非常に大きくなります。
これに対して、年平均約6.7億円の財政支援で鉄道を維持した方が地域全体の利益が大きいという結論が示されました。
こうした考え方は「クロスセクター効果」と呼ばれ、近江鉄道存続の大きな根拠となっています。
通学や地域交通を支える重要な役割
近江鉄道は高校生や高齢者にとって欠かせない移動手段です。
アンケートでは、高校生のおよそ3割が「近江鉄道がなくなると通学できない」と回答しています。
高齢者にとっても病院や買い物へ向かう交通手段として重要な存在です。
車を利用できない人にとって、鉄道は生活そのものを支えるインフラといえます。
地域全体の移動手段を維持するという観点でも、その役割は小さくありません。
利用者数だけでは測れない公共交通としての価値が、近江鉄道にはあります。
近江鉄道の今後と利便性は改善するのか
近江鉄道ではICOCA導入や新しい運賃制度など、利便性向上へ向けた取り組みが始まっています。
一方で無人化など課題もあり、利用者は変化への対応が必要になります。
ICOCA導入で便利になるポイント
ICOCA対応により、キャッシュレスで利用できる環境が整います。
これまで利用しづらかったICカード決済が可能になり、乗降時の利便性は大きく向上します。
観光客も利用しやすくなり、他社路線との乗り継ぎもスムーズになるでしょう。
一方で、無人駅では乗車方法が変わるため、事前に利用方法を確認しておくと安心です。
慣れるまでは戸惑う人もいますが、長期的には利用しやすい環境づくりにつながると期待されています。
小児10円運賃など新たな取り組み
子育て世代には大きなメリットとなる新制度も始まります。
小児用ICOCAを利用すると、全線どこまで乗っても1乗車10円になります。
西日本エリアでは初めての取り組みであり、家族で公共交通を利用するきっかけづくりとして注目されています。
観光利用だけでなく、地域住民の日常利用を増やす施策としても期待されています。
今後は利用者増加につながるかが大きなポイントになるでしょう。
車と近江鉄道のコストを比較するとどうなるか
運賃だけを見ると高く感じますが、車の維持費まで含めると見方は変わります。
自家用車にはガソリン代だけでなく、自動車税や保険料、車検代、駐車場代など多くの費用がかかります。
一方、通勤定期や通学定期を利用する場合は維持費を気にする必要がありません。
利用距離や家族構成によって有利・不利は異なるため、年間コストで比較すると近江鉄道の方が経済的になるケースもあります。
運賃だけで判断せず、生活全体の支出で比較することが大切です。
近江鉄道の廃線跡や歴史にも注目
近江鉄道は130年近い歴史を持ち、地域とともに歩んできた鉄道です。
現在も鉄道ファンを中心に歴史的な価値が注目されています。
御園線(飛行場線)の廃線跡とは
近江鉄道には現在も人気の高い廃線跡があります。
御園線は旧陸軍八日市飛行場へ物資を運ぶために利用されていた路線で、現在でも一部に線路跡や遺構が残っています。
鉄道ファンの間では歴史を感じられるスポットとして知られ、地域の近代史を学べる場所としても価値があります。
観光と鉄道文化を組み合わせた新たな魅力づくりも期待されています。
創立130周年を迎える近江鉄道の歩み
近江鉄道は2026年に創立130周年を迎えます。
1896年の設立以来、地域住民の移動を支え続け、多くの人に「ガチャコン」の愛称で親しまれてきました。
時代の変化とともに利用者数は減少しましたが、上下分離方式への移行など新たな挑戦も始まっています。
これからも地域に必要とされる鉄道であり続けるための取り組みが続けられています。
滋賀の交通は本当に不便なのか
滋賀県は全国でも自家用車への依存度が高い地域です。
そのため、近江鉄道だけではなく地域全体の交通をどう維持するかが重要な課題となっています。
車社会と鉄道の役割を比較
滋賀県では車と鉄道を組み合わせた交通網が現実的な選択肢です。
車は自由度が高い一方で、高齢になると運転免許の返納など新たな課題が生まれます。
鉄道が残ることで、将来の移動手段を確保できる安心感があります。
鉄道と車を対立させるのではなく、地域全体で補完し合うことが重要です。
持続可能な交通政策が今後ますます求められるでしょう。
今後の交通税や財政負担の課題
近江鉄道の存続には、今後も財政負担の議論が続く可能性があります。
上下分離方式によって経営は安定しましたが、自治体による支援は今後も必要です。
そのため交通税など新たな財源について議論される可能性もあります。
利用者・自治体・地域住民が、それぞれの立場から公共交通の価値を考える時代になっています。
制度の変更については、今後も公式発表を確認することが大切です。
まとめ|近江鉄道の不便さと今後の課題
当記事では、近江鉄道の不便さや黒字化の理由、上下分離方式による経営改革について紹介しました。
近江鉄道が不便といわれる背景には、運行本数の少なさや運賃の高さ、無人化などがあります。
一方で、上下分離方式によって経営は改善し、ICOCA導入や小児10円運賃など新たなサービスも始まりました。
鉄道を廃止した方が地域全体の負担が大きくなるという試算もあり、近江鉄道は今後も滋賀県の重要な公共交通として期待されています。
今後の制度変更や運行情報については、(出典:近江鉄道)で最新情報を確認しながら、地域交通の変化にも注目していきましょう。

